“信頼できる占い”のために

1. はじめに

私達が使っている技術について説明します。

2. 天体計算に Skyfield を用いる理由

占星術において、最も重要なのは「解釈」ではなく、その前提となる天体位置が正確であることです。

本サービスでは、天体位置計算に Python ライブラリ Skyfield を使用しています。

Skyfield は、天文学研究・宇宙開発の分野で実際に用いられている NASA/JPL(ジェット推進研究所)の天体暦データを直接扱うことができる計算基盤です。

2.1. NASA/JPL 天体暦(DE430 等)とは何か

Skyfield が参照する DE430 などの天体暦は、

  • 惑星探査
  • 人工衛星の軌道計算
  • 天文観測

といった用途のために作成された、数値積分に基づく高精度天体運動モデルです。

これは「理論式による近似」ではなく、観測データをもとに継続的に更新される実測に基づく数値解です。そのため、占星術用途としては過剰とも言えるほどの精度を持っています。

2.2. 計算できる天体とデータ範囲

Skyfield を用いることで、以下の天体位置を一貫した座標系で計算できます。

  • 太陽
  • 惑星(7天体)
  • 恒星(Hipparcos 星表)

これらはすべて、

  • 地球中心/観測地点指定
  • 時刻(UTC, TT など)の厳密処理

を前提に計算されます。

占星術で用いられる「ハウス」についても、天体位置が正確に確定しているため、任意の方式を実装することが可能です。

2.3. 精度について

Skyfield による天体位置計算の誤差は、条件にもよりますが 秒角レベルに収まります。

これは、

  • 天文台
  • 学術研究
  • 宇宙工学

で要求される精度と同等です。

占星術の解釈においてこの精度が直接的に必要とされるわけではありません。しかし、前提となる座標が曖昧でないことは、解釈の一貫性と再現性を保証します。

2.4. Skyfield 以外との比較

Swiss Ephemeris

Swiss Ephemeris は、占星術界隈では事実上の標準で、天体暦の精度は非常に高いです。占星術向け機能(ハウス、感受点など)が充実しています。実績・利用者数は圧倒的です。

ただし、ライセンスが厳しく(商用利用が制限)、実装がブラックボックス寄りです。総じて、天文学用途というより「占星術特化」をしています。

Astropy

Astropy は、天文学研究で広く使われており、座標変換・時間系処理が非常に強力です。学術的信頼性は最高水準にあります。

ただし、惑星位置計算は内部で他データに依存し、占星術用途には実装が重いです。研究用途には最強と思われますが、占星術サービスには少し重いです。

JPL Horizons

JPL Horizons は、NASA/JPLが提供する公式天体位置計算サービスで、精度・信頼性は最高です。

API依存・通信必須でバッチ処理・大量計算に不向きです。つまり、サービスとしての安定運用に不向きです。

Swiss Ephemeris のように占星術に最適化されたライブラリも存在しますが、本サービスでは、天文学の実務で検証されている計算基盤をそのまま利用できること、 商用・検証・再現性の観点で制約が少ないことを重視しました。

その結果、天文学と占星術の両方の前提を満たす選択肢としてSkyfield を採用しています。

2.5. では、なぜ「天文学レベル」が必要なのか

占星術は、計算と解釈の二層構造を持つ知です。

解釈がどれほど洗練されていても、前提となる天体位置が近似や簡略化に基づいていれば、全体の信頼性は揺らぎます。

本サービスでは、

  • 計算は天文学の方法論に委ねる
  • 解釈と言語化は AI に委ねる

という分業を行っています。

そのため、計算部分には現代天文学で実際に使われている基盤を選びました。

2.6. 過剰な精度について

中世の占星術師にとって、これほどの精度は想像の外にあったでしょう。

しかし、現代においてそれが無償で、再現可能で、検証可能な形で利用できる。

これは占星術を「雰囲気」ではなく、計算に裏打ちされた知として扱うための最低条件です。

3. 解釈と言語化に AI を用いる理由

上述の通り、天体位置の計算が事実として確定したあとに残るのは、それをどう読み解き、どのような言葉で提示するかという問題です。

占星術において、この工程はしばしば経験・感覚・文体の癖に依存してきました。

AI は入力された情報が正しければ、誤差を検知・抑制する設計ができます。また、細かい表現の違いはありますが、ルールとテンプレで出力の揺らぎを抑えることができます。

本サービスでは、この解釈と言語化の工程にAIを用いています。

3.1. 解釈は計算ではない

占星術の解釈は、数式で一意に決まるものではありません。

  • 複数の象徴の重なり
  • 文脈による意味の変化
  • 読み手の受け取り方

これらを整理し、一貫した文章にまとめる必要があります。

3.2. AI が適している領域

AIは、

  • 大量の象徴体系
  • 過去の解釈パターン
  • 言語表現の幅

を同時に扱いながら、一定の基準に沿って文章を構成することができます。

これは、占星術の解釈において特に重要な特性です。

本サービスでは、

  • 同じ天体配置
  • 同じ前提条件

であれば、解釈の基調が大きく変わることはありません。これは、再現性を持った解釈を提供するための設計です。

占星術を個人の感覚ではなく、構造化された知として扱うためには、この再現性が不可欠です。

4. 信頼できるサービスのために

本サービスでは、

  • 不安を煽らない
  • 決めつけない
  • 依存を生まない

これらを明示し、文章生成に反映されます。

占星術の言葉が人に与える影響を考えると、AI を使うことは不要な属人化を減らし、安全、安心なサービスを提供できるメリットと考えられます。

5. おわりに

AIは、占星術を魔術的に強化する装置ではありません。

むしろ、

  • 解釈の偏りを抑え
  • 表現を安定させ
  • 再現性を確保する

そのための、現代的な補助技術です。


参考文献(抜粋)

  • NASA Jet Propulsion Laboratory, Planetary and Lunar Ephemerides
  • Rhind, B., Skyfield: High-precision astronomy for Python, Project Documentation
  • Standish, E. M., JPL Planetary and Lunar Ephemerides, Interoffice Memorandum, NASA
  • Lindberg, D. C., The Beginnings of Western Science, University of Chicago Press
  • Tester, S. J., A History of Western Astrology, Boydell Press
  • Koyré, A., From the Closed World to the Infinite Universe, Johns Hopkins University Press